ここ数年の間、美容業界に変化が現れています。最初は小さな波だったのですが、次第に大きな波に変化して、今、世界の常識になりつつあります。それは「シンプル」。

技術やテクノロジーの進化でいろいろな製剤が開発され、“盛る”時代が一世を風靡した時代から、必要最低限の成分で処方し、肌の負担を与えないシンプルなコスメへ見直されているのです。

年に何度か開催している国際ビューティエキスポを訪れた時も、「クリーン・ビューティー」がビューティートレンドのキーワードとして大々的に掲げられていました。地球環境に配慮し、パッケージの見直しや地球に優しい成分の開発、サスティナブルな取り組みを目の当たりにすると、“時代は確実に変化している”ことを実感。数年前からこの動きは日本にもありましたが、今後急速に加速していくでしょう。

シンプルビューティーってどういうこと？

もうひとつ印象に残ったのが“シンプル”というキーワード。新しい美容成分を開発するのではなく、今ある美容成分をもう１度見直し、その良さを最大限に引き出していこうという取り組み。出店した開発担当者は「美容成分や植物成分の分析をすることで今まで知らなかった機能や特徴を知ることができました。そのことで余計な美容成分を入れなくても良いことがわかったし、よりシンプルな処方に組み直すことができた」と話していました。

皆さんが化粧品に期待することは何でしょうか。化粧品は直接肌につけるから安心・安全であることは当たり前。最近ではより早く・確かな効果実感を求める方も増えています。ですが、季節や体調のちょっとした変化でも肌に影響を及ぼすため、「コスメを使ったら肌が荒れてしまった」なんていう残念な声を聞くことも。使い手としてはコスメの使用は慎重にならざるを得えないというのが正直なところですよね。

そんな中、時代は“美しさ”の原点回帰へ。「肌が美しいってどういうこと？ 」「肌が美しくなるためには何をしたらいい？」をシンプルに問いただしたり、肌に負担をかけず“効果”を得られるシンプルなコスメに注目が集まっています。おもしろいのは、美容成分も処方もアップデートして、新しい“シンプル”をうたっているところ。現代版「Simple Is Beautiful（シンプル イズ ビューティフル）」が美容業界のトレンドになりつつあります。

ブランド創設時から“シンプルビューティー”をうたう
アンブリオリス

1950年にパリの皮膚科医が「健やかで美しい肌を叶えるために肌に必要なものだけを配合したスキンケアを作りたい」と提案し、生まれたのがアンブリオリスのスキンケア。パリのサン＝ルイ病院に勤めていた皮膚科医トリコ氏が「肌の自然な美しさを引き出すことを目的とし、誰もが使える手ごろな価格のクリームを開発したのが始まりで、これがのちのブランドを代表するアイテム「アンブリオリス モイスチャークリーム」となります。

このクリームの特徴はまさに「シンプル」！ 美肌の天敵でもある乾燥から肌を守り、十分な保湿ケアをしてくれるシアバター、ミツロウ、大豆タンパク、アロエベラを配合したシンプルな処方はもちろん、パラベンやアルコールなども入れない肌に優しい設計や、これひとつでクレンジング、メイク前の化粧下地、マッサージクリームなどにも使えるマルチアイテムでもありました。

販売するとビューティーシークレットとして美にこだわる人々の目に止まりました。メイクアップアーティストのメイクボックスには必ずといっていいほど入っていて、モデルや女優の基礎化粧品として愛用されるようになったのです。

時代を先取りしたブランドのフィロソフィーは70年近く経った今でも変わることなく、口コミでファンを増やし続けています。SNSを通してインフルエンサーからフォロワーへ、友人、母から娘へ。いわば究極の“シンプルビューティー”として多くの女性の肌に寄り添い、支持されています。

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